2011年08月02日

「復興まちづくりに関わりながら思うこと」 似内 遼一

連日、テレビや新聞などのメディアを通して、被災地の現状や問題について、多くの人の耳にその情報が届いている。しかし、多くの場合、被害の大きさや住民の不満の声ばかりがピックアップされているように思う。現場の草の根的な活動やボランティア団体の活動に関しても報道されるが、個別の現象としての紹介に留まっているように思える。これらのことが最終的には、どのように復興まちづくりにつながるのか(または、つながらないのか)というのが、一般的には見えて来ないのではないのではないか。

私は、専攻が都市工学専攻ということもあり、岩手県陸前高田市で復興まちづくりに関わる活動を行っている。今回は、その活動の紹介を通じて、復興まちづくりにおける研究者や都市計画家の役割の一つについて伝えたいと思う。

■復興まちづくりへの考え方
具体的な活動について話す前に、前提となる復興まちづくりの考え方と、復興まちづくりに関する現場の状況や環境について説明しておきたい。

「復興」という言葉は、この数ヶ月であらゆるところで聞くようになったが、復興まちづくりで考えると、それは基本的に3つのステージに分けることができる。それは、避難期、仮設期、復興期(本設期とも言う)という一連のステージに分けられる。それぞれ、避難期は被災して避難所で応急的に暮らす期間、仮設期は仮設住宅地で一時的に暮らす期間、復興期は新設された市街地(集落)に再び暮らす期間という意味となる。それぞれのステージで必要となる施策や対策は異なってくるため、それぞれのステージに合わせた対応をしなければならない。しかし、一方でそれぞれのステージは独立して存在はせず、一連の流れとして生活再建をしながら、復興まちづくりを考えなければならない。

このような復興まちづくりのプロセスを考える一方で、地域ごとの被災状況を踏まえて対策を考える必要もある。過去の阪神淡路大震災や中越地震の被災と大きく異なり、今回の震災は津波によって広範囲に被害が出た。その結果、被害の大きさや性質も地域ごとに差があり、大きく分ければ、5つに分けることができる:市街地全体が被災した地域、市街地の一部(特に中心市街地)が被災した地域、漁村などの集落地域、平野部が被災した地域、原発の避難区域に指定されている地域。このように、被災の性質の違いを留意しながら、復興まちづくりを進めていくことが現場では求められている。

■復興まちづくりの現場の状況や環境
復興まちづくりのプロセスと被災状況を考慮して、復興計画や施策を作っていかなければいけないが、その環境はなかなか厳しいものがある。行政のマンパワー不足、高齢社会や地域産業の衰退などによるもともとの地域の体力の低下、財源の不足など、深刻な問題が潜んでいる。例えば、岩手県の大槌町は、役所の幹部がほとんど流されてしまっている。また、東北では高齢化率が3割を超えている地域も少なくなく、震災の結果その率が高まっていると予想される。このような問題を抱えたままで、実際には復興まちづくりが後手に回ってしまっている面は否めない。

このように、復興まちづくりの環境は非常に複雑であり、デリケートである。しかし、何もしないと、なし崩し的に元のようなまちができてしまい、復興に至らない恐れがある。そこで、地元の人と協力しながら、研究者や都市計画家が支援に入り、復興まちづくりを促進することが大事となってくる。

■陸前高田市での支援活動
おそらくニュースでご存知だと思うが、岩手県の陸前高田市は最も被害が大きい地域の一つであり、先の分類で言えば、市街地全体が被災した地域である。図1に津波の遡上範囲を示した。被災世帯数は3,800世帯を超え、死亡者も1,371人に上っている。


図1.png
<図1 津波の遡上範囲>



私の研究室の先生が、陸前高田市の復興まちづくりを支援する専門家グループふらっとTAKATAを立ち上げたことをきっかけに、私も陸前高田市での活動に関わることとなった。これまでに、私たちは復興まちづくりに対して2つの支援活動を行ってきた(図2)。一つは、市民グループの立ち上げ支援と、もう一つは、まちの将来に対する市民の意向調査の実施である。


図2.png
<図2 陸前高田市での活動の動き>



この活動の意図としては、作成中の復興計画がきちんと市民の意向やニーズが反映されることを狙っている。NPO法人の立ち上げにおいては、市民目線から復興を考えたい市民に対して、活動をしやすい組織形態には何があるか、復興モデルにはどんな提案がなされているのかなどを解説したりした。また、意向調査では将来の住み方やまちの形、生活の不安などを聞き、その分析結果を市民にも行政にもフィードバックする活動をした。そうすることで、復興まちづくりの各ステージで異なる市民のニーズを拾い上げ、きめ細かに対応ができるようになり、また復興期になったときに市民が本当に住みたいまちにより近づくことができると考える。

こうした活動を専門家が継続的に実施していくことで、個別の市民の不満やニーズをステージごと(8-9月に仮設住宅地を対象に調査実施予定)で集約し、草の根的な市民の活動を誘導しつつ、元のまちの復旧やなし崩し的なまちづくりにならないで、これからの時代にあったまちに再生できるようになるだろう。

■これからの活動の展望
これからの時代にあったまちへの再生を目指すためには、専門家は既存の制度的枠組みに捕われないで、新しい技術や仕組みを研究し、実践していくことも必要だと考える。したがって、上記のような支援活動をしつつも、その新しい技術や仕組みの提案をしていきたい。特に、これから取組もうと思っていることは、東京や他の地域に出てしまった若者が地元の復興まちづくりに関われる仕組みや手法について検討し、提案していくことをしたいと考えている。


簡単な自己紹介
似内 遼一(にたない りょういち)
工学系研究科都市工学専攻D1。学部時代、修士課程ともに都市工学を専攻し、現在はイギリスのcommunity planningを通じた総合的な地域再生の枠組みについて研究を行っている。2010年に相模原市特別研究員として勤務し、相模原市のまちづくり条例の運用実態と制度的課題の研究を行った。