2013年07月11日

「学生」と「生徒」の使い分け (日下田 岳史)

私は、日本の教育について、社会学的な研究をしています。高等教育を対象に計量的な研究を行うことが多いのですが、ここでは最近気になっていることを書いてみたいと思います。厳密な文章ではありません。気軽に読んでいただければ幸いです。

それは、大学生は「学生」か、それとも「生徒」か、というものです。英語でいえば両方とも”student”なのでしょう。ですが、日本語では、「学生」と「生徒」は使い分けられているような気がします。もしかすると、「生徒」は「学生」を含むので「生徒」という言葉を一貫して使う、という考え方をする人もいるかもしれませんね。しかし、私としては、大学生に対して「学生」という言葉を当てたいと考えています。ちなみに、教育基本法上の用語の使い分けとして、大学には「学生」を、いわゆる専門学校や高校等には「生徒」を対応させています。さらに、大学に「学生部」はあっても、「生徒部」はおそらくないでしょう。

「学生」と「生徒」の使い分けについて、私が見聞した範囲という限定つきではありますが、本人は自分のことを「生徒」だと思っている大学生が、そこそこいるような感じがします。

ところが不思議なことに、そのような大学生が卒業後に在学中のことを回顧する際には決まって、「『学生』時代は〜」と言うようです。「『生徒』時代は〜」という言葉は、私はあまり聞いたことがない気がします。また、彼ら・彼女らはいつの間にか、大学生のことを「学生さん」と呼ぶようになっています。これもまた、不思議なことです。

実際、「学生」と「生徒」の使い分けに関して関心を持っている人は、少なくありません。試しに、「学生 生徒 違い」という検索語をグーグルに入れてみましょう。そうすると、715万件が抽出されます(平成25年7月11日現在)。大量のウェブサイトの中には、私と同じようなことを言っているものも、きっとたくさんあるでしょう。もっとも、私のほうが後発であることは間違いなく、二番煎じどころか715万番煎じといったところです。

それでは、彼ら・彼女らは、「学生」・「生徒」という言葉について、どのような意味付けを行っているのでしょうか。大学生になっても高校生気分なので「生徒」という言葉を使うのだという説明は、何かもっともらしい気がします。しかし、彼ら・彼女らは、卒業後に「学生」時代を作りだすことがあります。

もしかすると、大学の意味は在学中には明らかでなく、卒業してから明らかになる、ということを含意しているようにも思われます。既に述べたように、私個人としては大学生に「生徒」という言葉を当てる考えはありませんが、大学生に「生徒」という言葉を当てている人がいることもまた事実です。しかも、言葉の当て方は常に一定であるわけではなく、状況に応じて変化するものです。そこには、大学とは何かという問いが隠されています。この問いに応えていくことも、教育社会学の一つのテーマなのかもしれません。

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日下田岳史
東京大学大学院教育学研究科博士課程

教育社会学を勉強しております。高等教育分野を対象とする計量的研究を主にしています。