2015年04月01日

My Amazing Sky in Austin (海嶋 美里)

 私は弱虫の泣き虫な子でした。
 なので、昔は共働きの両親に代わって育ててくれた祖母や学校の先生をそれはそれは困らせました。
 何より環境の変化にてきめん弱かったのです。
 一人ではどこにも行けないし、近所に引っ越すだけなのに嫌で嫌で押し入れに引きこもってストライキしたこともありました。

そんな私が20年後、一人でアメリカに留学するなんて。人って変わるもんだ。

 半年間の留学先はテキサス大学オースティン校のGeorge Georgiou研究室。
 抗体や酵素、応用免疫学の分野で世界をリードしているラボ。このラボを選んだ理由は単純にアメリカで研究してみたいと思ったことと、Georgiou先生にずっと憧れていたからです。(Georgiou先生に実際にお会いして、一流の研究者とは、博識さも勿論大事なことだけど、何より人格者であることで大勢の優秀な仲間や素晴らしい研究を引き寄せているんだなぁと感じました)

 さて、私の日本での研究は「酵母・タンパク質間相互作用・スクリーニング技術」の三文字。
 そんな私がGeorgiou研究室に足を踏み入れてみたは良いけれど、実はヒト細胞の実験や抗体・酵素の専門家でもないし、免疫なんて習ったこともありませんでした。トップレベルの研究室、普通にNatureやらに論文を持っている人もいて、口から火が出るほど悔しかったのは自分の日本での研究を無意味やら、インパクトが低いやら否定されたこと。(ここで初めて私ってなんだかんだ言って自分の研究が大好きなんだなぁって実感しました(笑)私はどんな研究でも何かしら科学はあると信じています…負け惜しみでしょうか?(笑))
 とにかく、エリート達には囲まれ、D3の私がB4以下の知識と技術、何より全てEnglish、English、English。そうなると劣等感と自己嫌悪で押しつぶされそうになるのは必然なこと。そして、残念なことに私の泣き虫は健在で、大学からの帰り道に悔しいやら情けないやらで、一人で何度も空を見ながら泣いて帰りました。(勝手なバックミュージックは坂本九さんの「上を向いて歩こう」で(笑)アメリカでも「SUKIYAKI」という曲名でみんな知っていて驚きました)

 そして今、日本に帰国して、私は人生には無駄な経験なんて1つもないと心の底から笑って言える状況です。全て引っ括めて楽しかった、私の中のキラキラした宝物になりました。

 劣等感や自己嫌悪、変なプライドも役に立たない感情は全部捨てて、知らないことを素直に認めよう。新しいことを学ぶということは、なんてワクワクすることなのか。(アメリカの大学には年齢不詳の方達がたくさんいて、何歳になっても勉強しようという姿勢に非常に感銘を受けました。)
 英語なんて、どうにかなる。文法がめちゃくちゃだろうが、伝えようと頑張れば伝わる。笑顔で「Yeah! Cool!」ってとりあえず言っておけば、大抵の日常会話は乗り切れました、多分。
 そして、全ては時間が解決してくれる。アメリカで友人と私の合い言葉は「Time is the best medicine for everything」でした。
これが半年間で感じたことです。

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 大学生の頃から海外一人旅が趣味になりました。理由は3つあります。
 1つ目は、一人で海外に身を置くと、良い孤独感で自分の本質が顔を出すからです。案の定、アメリカでも、「私は研究が好きなのだろうか?」「向いているのだろうか?」「何のためにここに居るのだろうか?」「何がしたいのだろうか?」と、嫌でも自分と向き合うしかない辛い時間でした。でも、必要なことでした。
 2つ目は、人の優しさをいつも以上に感じられるからです。アメリカでも上記のような状態だったので、日本にいる時の数倍は人の優しさや思いやりが心に沁みました。何よりオースティンの人たちはテキサスの太陽のように温かく笑顔が素敵で、親切な人達ばかりでした。バスの運転手さん、コーヒーショップのおじさん、スーパーの店員さん、街ですれ違う人。そんな人達のちょっとした言葉や親切にも何度も救われました。海外に行くと、自分も優しくなれる気がします。
 3つ目は、強くなれるからです。海外では日本以上に孤独で、無力で、ちっぽけな存在になれます。強くなるには、一度きちんと弱くなる必要がある。私はアメリカでかなり弱い人間になっていました。弱いことが嫌で、「強さ」と「強がり」の違いも分からず、無駄にもがいて、長らく沈没していました。でも、強い人も最初から強いのではない、沈没することもある、沈没しても経験からそこから速く這い上がる方法を知っているから強い人なのだと、そして大抵のことは時間が解決してくれると知りました。私も少しは強くなれた気がします。

 弱虫泣き虫小心者だった子も、いつの間にか気がつけば一人でアメリカに降り立っていました。
 そして、たどり着いたオースティンの空はどこまでも青く、澄み切っていました。
 綺麗な星空を眺めていたら、隕石が落ちてきて驚いたこともありました。
 あの空が恋しい。いつも元気をくれました。
 どこまでも飛んでいけるような気になる、どこまでも青い青いAmazing Skyでした。

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海嶋 美里
神戸大学大学院 工学研究科 博士過程3年

酵母を使ってスクリーニングシステムを作ったり、タンパク質をいじったりしています。パン作りが趣味なので公私ともに酵母ちゃんにはお世話になっています。
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