2012年07月01日

「リレーはいいものだ」 川合 佑典

 リレーはいいものだなと思う。なぜいいものだと思うかというと、全力で走ってきた人がいて、これから全力で走る人がいて、バトンを渡すだけで何も言わなくても全力で走っていることが伝わっていく、そんな信頼感があるから。高校生の頃に読んだ漫画のウケウリである。今あらためて書いてみて、かなりクサイ台詞だと気づいたけど、元来単純な人間なので読んだ当時はいたく感動したのだった。そんなわけで今もリレーはいいものだなと思っている。

 そんな高校時代から十年近くたって、論文に載せるリファレンスのリストを作っていたとき、過去に走ってきた人からのバトンを受け取っているような気になった。そして自分の論文が初めて誰かに引用されたとき、バトンがつながったような気がした。もちろん錯覚で、走り終えた気になっちゃダメなのだけれど、研究の系譜・つながりというものを意識できた経験だった。

 それから少したった頃、「自分が興味を持って研究している分野は直接世の中の役に立つような研究ではないように思う。じゃあ自分は何のために研究をしているんだろう?
と寝る前に考えたことがある。寝ながら出した答えは、「バトンを渡すため」というものだった。過去、自分が面白いと思ったことを同じように面白いと考え研究した人がいて、その面白いことのおかげで自分の人生は少し豊かになった。きっと未来にも自分が面白いと思ったことを同じように面白いと考える人がいて、その人の人生が少し豊かになれば、まぁそれでいいかな。などというゆるい答え。もちろん色んなことを考えるとそれでいいわけは無いのだけれど、一瞬だけ悩んだその夜に関してはいい夢を見ることができた。

 再び高校生の頃を思い出して、これまた当時好きだった囲碁漫画の主人公みたいに「遠い過去と遠い未来をつなぐために俺はいる」なんて大きなことは言えないけれど、ほんの少しの過去からもらったものをほんの少しの未来に渡せたら、それは幸せなことだと思う。そんなわけで誰かに何かをつなげていく、リレーはいいものだなと思う。

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川合佑典
北海道大学獣医学研究科 大学院生

脊椎動物がもつ解毒に関わる酵素(異物代謝酵素)の研究を行っています。
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