2012年08月24日

自然の中のデジャヴ (柏木 有太郎)

 私たちが考えている時も休んでいる時も、神経細胞は絶え間なく情報を伝達しています。この神経の情報伝達はシナプスという細胞同士の繋ぎ目を介して行われます。
 僕は神経細胞の複雑な形態がどの様に制御されるか、またシナプス形成を制御する分子について、顕微鏡を使って調べています。

synapse_ and_illumination

 ケヤキの木が神経細胞にしか見えない時期が存在します。それは恋人たちで街が賑わう12月のイルミネーションシーズン。御存知の通り、イルミネーションは木の肌にそってオレンジ色に輝くLEDが飾り付けられます。
 神経細胞では「樹状突起」にそってシナプスが点状に形成されます。それではシナプスを蛍光標識すると、どの様に見えるでしょうか?実はイルミネーションそっくりなんですね。ビックリです。
 ある冬の日。表参道を一人で歩いていた僕は見ている景色がイルミネーションなのか顕微鏡の中の神経細胞なのか区別がつかなくなってしまいました。職業病とは本当に怖いものです。夏の風物詩である花火もとある細胞に見えてしまったことがあるのですが、それはまた別のお話。
 
 さて、研究室にいると生活が実験に左右されるために友人と交友を持つのも難しくなります。研究が行き詰って心が鬱々としている時も、人と話せば少し心が楽になります。どの様な手段にせよ、人と話すことは大切なのだと実感しています。
 最近はtwitterやFacebookが普及しているので、研究室に居ながらも色々な人とコミュニケーションを取れます。顔を見たこともない様々な人が実験の悩みを言い合っていたり、論文について考察していたり。自分以外の人が研究室生活をおくっている様子を見るだけで楽めます。大学院生に限らず、ポスドクや助教もSNSにハマっているのは、みんな人との繋がりに飢えているのかもしれません。

 博士課程もそろそろ終わりが見えてきました。過去を振り返ってみると研究室生活は長いようであっという間です。卒業へ向かって研究成果をあげつつ、プライベートもしっかり楽しみたい。そんなことを妄想しながら今日も神経細胞を見ています。

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柏木有太郎
東京大学大学院医学系研究科

神経細胞が複雑な形態を形成するメカニズムを研究しています。イルミネーションの画像は『音楽と風景ブログ』さんから転載の許可をいただきました。この場を借りて御礼申し上げます。