2013年05月20日

朝カフェ(熊本 康昭)

私は、応用光学を専門とする科学者である。ポスドク3年目である。今年の4月から指導する学生が増え、新たに研究予算も頂くことになった。30を前にようやく研究が軌道にのりつつある、といったところか。

私が研究をする上で、大切にしていることがある。興味を広く持つことである。「博士」のことを「ある一つの事だけしか出来ない人」と考える人は今でも多いように思うが、私は違うと思う。「博識」の「士」である。実際、私の場合は、博士号を取得後は、博士号取得のテーマにとらわれずに研究を進めている。また、これまであまり取り組んだことが無かったこと、例えば、プログラミング、電気回路構築、化学合成など、案外やってみれば出来るものだな、と感じている。博士課程の時の経験は、私を「博士」として芽吹かせたのかもしれない。

広く興味をもつ、というが、ポスドクとして働いてからは、学生時代に比べると自身の研究に対する責任感が増して、研究以外に時間をかけるのはなかなか難しい。ちょっと油断すると、他の分野のことを学んだり、他の分野の人と交流したりすることを後回しにしてしまい、視野が狭くなっているな、と気付くことがある。

自分だけの袋小路に陥らないために、去年の4月から行なっている活動がある。毎週金曜日、勤務する大学の広場で「朝カフェ」を開催している。去年の4月に今の勤務地に転勤してきたのをきっかけに、何か新しいことを始めよう、との想いでスタートさせた活動である。非常にユルい活動で、毎週1回、曜日と時間(朝)と場所だけを決めてコミュニティーに声をかけて、時間があいていて、さらに気が向いた人だけがぶらっと立ち寄って、コーヒーを啜りながら雑談をする、というものである。活動自体には、特に目的や目標は定めていない。雑談のテーマも特に設定していない。何の意味があるのかと言われそうだが、気が向いて立ち寄った人が、自分で何か意味を見出せればそれでよいのである。朝早く来ることができた、なんて理由でも十分。将来的には、本当のカフェでこういうことを出来たら良いと構想中。

私自身は、朝カフェを通じて、自分にはない興味の対象を持っている人と、リラックスして話をするのが好きである。新しい考えや価値観を分けてもらえる気がする。実際、頭を柔らかくしたり、いろんな情報にアンテナを張ったりすることを通して、1日、あるいは1週間の活動が良い影響を受けている。また、朝早くから仕事をすることで、夜早く仕事を終わらせることができる。酒好きには魅力的な活動だと思っている。

朝カフェは、今年の4月から東京大学でもスタートした。3月まで大阪大学にいて朝カフェに顔を出してくれていた友人が関東にいる友人に声をかけてスタートさせてくれたものである。こういう草の根の活動が広がっていくというのはなかなか気持ちがいいものである。

読者の方で、もし朝カフェに興味を持った方がいれば、是非とも全国各地の大学等で、タケノコのようにょきにょきと乱立させてもらえれば幸いである。その際には、ご一報頂ければ尚嬉しい。学会等で出張の際にでも立ち寄ってみたい。

仕事の息抜きに、ちょっと違うことをすることは、やはりいいものである。

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熊本 康昭(くまもと やすあき)、博士(工学)。
理化学研究所・近接場ナノフォトニクス研究チーム・特別研究員/大阪大学-理化学研究所ナノフォトニクス共同研究室・連携研究員・
専門は、新奇な光学顕微鏡の研究と開発。その他にも、バイオフォトニクス、ナノフォトニクス、等々。

新しいコンセプトの光学顕微鏡を研究、開発しています。最近は、紫外線を利用した、ちょっとアブナイ顕微鏡の研究をしています。工学をやっているからには、やはり最終目標は研究成果の製品化応用。そこを意識して、日々頑張っています。

最近のブームは、何でも自分で挑戦すること。CAD設計、3Dプリンタでの試作、電気回路の作製、簡単なプログラミング等、昔はめんどくさがってやらなかったようなことをやって、既製品に頼らず、地道に色々と経験しながらやるようにしています。本来こういうマメさが要求される仕事は苦手でしたが、最近はやってみれば案外出来るようになっていて、なかなか楽しいもんです。
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